子供の才能を伸ばす教育を
教師塾、教員研修、セミナー、講演などの活動と、 教育への想い、教育論を語ります。 「教師」「保護者」そして「子供に関わる多くの方」へのメッセージ @T's skill教育技術研究所
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連載 第8回 受験指導と人間性
塾講師として指導するのであれば
大切なことを意識しなければいけません。

それは生徒の人間性。

点数を取らせる、合格させることが塾の役割ではあるけれど
子供の人間性を無視していい、
ましてや壊して良い、などという理由はどこにもありません。

そして
それを忘れて、点を取らせることだけに夢中になると
子供の人間性、性格へ大きな悪影響を及ぼす可能性があることも
理解していなければいけません。


残念ながら
実績を出す、合格させる、ということばかりに目を奪われて
この様なことを忘れてしまっている塾業界の方々は大変多いものです。

だから
学校の先生に塾と学校は全く違うもの、
塾は教育の場とは言えない、
塾講師に教育は分からない、
などと言われてしまうのです。

などと言っている私も
過去にはそのような先生でした・・・
都内大手の進学塾・・・
その研修でした。

生徒を合格させなければ
それまでに行なったどんなことも無意味だ、と・・・

当時、若かった私には
そのことを素直に受け止めて
合格させること、点数を取らせることだけに一生懸命で
生徒の心など見えていませんでした。


ですから
生徒が宿題を忘れたなら
その生徒の宿題を忘れるに至った背景など聞く耳も持たず
「ふざけるな! 宿題をやってこないなら帰れ!」
などど、罵倒していました。

その生徒は目に涙を浮かべ
何かを言いたそうにしているものの
それが言い出せない。

そんな状況に追い討ちをかけるように
「何か言いたいことがありそうだな?あるなら言ってみろ」
とたたみかけ、当然、萎縮してしまってなかなか口に出せずにいる
その瞬間を狙い、

「黙ってちゃ分かんないんだよ!」
「言い返せないなら、もう帰っていいから」
と冷たく言い放ったりしました。

帰るわけにもいかない生徒は
呆然と立ち尽くしているのですが、
そこへ、「まだいたの?」と言い放ち・・・

収拾がつかないから、とりあえず
「宿題を居残りでやって、次回から二度と忘れないなら席に着け」
と言って席へ着かせました。


でも、その生徒
その日の授業中はほとんど集中できる状況ではありませんでした。

当時、それぐらい厳しく接して
二度と忘れないように徹底することが必要だ、と思い込んでいました。

そして、その様な対応は
点数を取らせる、という部分にも同様で
点数が取れない人は人ではない、という様な扱いをして
徹底的に厳しく管理していました。

それが最終的に合格に繋がると信じて。



今思えば、酷いものです。
恐怖でおさえ付けることだけが生徒を管理する技術だと
勘違いしていた訳です。

結局、当時の生徒は合格していくと
保護者には合格したことを感謝されるけれど
生徒はその後、二度と塾へ寄り付く事はありませんでした。

さらに、噂に聞けば
進学先の学校では落ちこぼれてしまっている、という話ばかりを
耳にしていました。

しかし、それを
塾講師の仕事は合格させることだから関係ない
と、目を背け・・・

そんな状況が数年・・・

私は塾の先生になりたかった原点を振り返ると
確か、自分が膨大な詰め込み受験をして
「燃え尽きてしまったから」
自分と同じ思いを生徒にさせることなく
「燃え尽きず、受験後も伸びるための受験指導」をできる先生に
なりたい、と思ったからだったはずなのに・・・



その原点を思い浮かべたある日の授業で
改めて教室を見てみると、大きなショックを受けました。
私が生徒を罵倒するものだから
生徒も生徒同士で、口汚く罵倒し合っているのです。

発問し、生徒が間違えたものなら
他の生徒が一斉に間違えた生徒を罵倒する
それをさらに怒鳴って制し、黙らせる

緊張感というよりは、生徒が萎縮した環境。

そんな状況を目の前にして
それまではそれが常識と思っていたのですが
原点を思い浮かべたあとの授業で見たら
何とも地獄絵図のような授業でした。

志望校に合格させる、という大義名分の下で
何でもあり、の授業をしてきた結果が、これか・・・

生徒がお互いを罵倒し、
強い者が弱い者をさらに陥れ、
いじめなど当たり前、
這い上がってこれないのなら、退塾を・・・

そんな環境が教育と呼べるのか?
いや、そんなはずはない。

塾講師は合格させることが仕事だから関係ない?
そんな愚かな話は無い。

少なくとも、多感な成長期に
多くの時間を共有し、確実に人間形成に影響を与えない
と考える方が難しい。

成績も上げ、その上で、人間性にも意識を向けなければ
プロの先生と呼ばれる資格はないだろう。



そう思ったとき、
自分の中の塾講師としてやってきた事の全てが崩れ去ったような
気分になりました。

その様な授業ですから
当然、生徒に叩き込むことだけが優先で
才能なんてどうでもいい。
合格した後のことなど考えてもいなかった。

本当に恥ずかしい授業をしていました。


塾講師も、もっと生徒に与える影響を考えなくてはいけません。
合格させるという大義名分があるから何をしても良い、のではありません。

塾も学校も、同じ様に教育の場であり、
その土台には人間性、社会性、コミュニケーションがあるのです。

加熱する受験戦争の中でこそ
塾の先生はそろそろ、方向転換をしなければいけません。

実績を出さないと生き残れないから

それはそうかも知れませんが、
成績も上げ、人間性や心を育て、受験勉強を通じて生きる力を育てる
という授業をできる様にしなければ、
近い将来、塾業界もそっぽを向かれることでしょう。


現実に
私のクラスに転塾をしてきた生徒がいます。
その生徒は別の大手塾に通っていたのですが、
「僕は勉強だけしていれば良いんだ」とつぶやき、
「友達なんていらない」と言うようになって
保護者の方がその状況に危機感を感じたため、だそうです。

その生徒は
答案に先生が赤ペンでコメントをつけたり
名前を覚えて呼んでもらえるということだけでも
大いに喜んでいる様でした。

徐々に笑顔も取り戻し
クラスの生徒たちとも仲良くなり、
チームとしてまとまっていきました。

勉強に対する取り組みも変わっていった様です。
保護者の方には、卒業する際、
「いい受験をすることができました」と言って頂けました。

それが何より嬉しい言葉です。


保護者も生徒も盲目ではありません。
いずれ、子供にとって本当に大切なことを考えて実績だけではなく
塾選びをするようになることでしょう。

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moro(諸葛正弥)

  • Author:moro(諸葛正弥)
  • 自己紹介
    ・教育技術コンサルタント
     T's skill教育技術研究所代表
    ・NPO法人交流分析協会会員
     交流分析士
    ・日本教育工学会 会員
    ・建築家

    ■明治図書より
    進学塾講師が書いた日本初の教育図書
    「人気塾講師直伝!イラスト図解でわかるプロ教師力アップ術55」を出版
    現在、第7版
    ■毎日コミュニケーションズより
    「フィンランドメソッド実践ドリル」を出版
    現在、第5版
    ■メールマガジンも発行しています
     「せんせいのスキル」
    e-mail:
    長年の大手進学塾講師経験や研修担当経験を経て「T's skill教師塾」を設立し、塾講師出身の教員研修講師として活動。
    私立中高一貫校、教育委員会、専門学校など研修や講演、顧問などを通じ、学校教育改革を提案中。

    これまでの数々の講演・研修ではこれまでの研修と違う、こういう研修を早く受けたかった、と高い評価を頂いております。

    T's skill「教師塾」を開催
    授業技術の研修・講義など各地で実施
    各種教育セミナーも開催予定
    全国から数多くのお問い合わせを頂いております

    2008年メディア関連の履歴
    ■NHK「おはようニッポン」
    ■TBS「ピンポン」
    ■ラジオ「J−WAVE」
    ■雑誌「R25」
    ■新聞「日刊ゲンダイ」
    ■雑誌「東洋経済」(書評)
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