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| 夢を形に 5 |
大学を選択した理由は 知名度の高い、第一線で活躍する建築家がいる という条件で選びました。
それが将来、自分が仕事をする上で 何かの役に立つ、という直感を信じて・・・
そうして入学式を迎え、 最初にしたこと、それは当時助教授だった建築家の 先生の下へ挨拶に行くこと。
別に何かを期待した訳ではありませんが、 将来、自分が学ぶとき、ゼミを選択するときに いずれそこで学びたい。 そんな覚悟を決めるのには充分でした。 勉強は非常に楽しいものでした。 何をするにも、意欲が違う感じがありました。
勉強以外にも何かやりたい気持ちもあって 野球サークルまでつくりました。 人を集め、いつの間にか最大で30人を超えていました。 仲間もできました。 非常に楽しい大学生活が始まりました。
しかし・・・ 私は設計の授業で躓いてしまいました。 それは 肝心の設計に関わる造形の授業で 良い評価を得ることができなかったのです。
私はデザインという世界とあまりに無縁の生活をしていたのです。 センス、バランス、感覚・・・ 何をどう切り取っても、周囲の皆に勝てませんでした。 これまで、 CDやファッション、流行のTVなどは基本的に無用のもので これらのことに夢中になることは悪いこと。 そんな躾をされていた私にとって、あまりに衝撃的でした。 センスを鍛える、その積み重ねが違う。 そう直感で感じました。
それはその後の設計の授業でも同じでした。 どうもセンスで負けている。 自分で見ても分かりました。 そこへ追い討ちをかけるように・・・ 精一杯、デザインをしてきた住宅の設計プランに対し 設計の担当教授が 「この窓の収まりの詳細はどうなっているんだ?」 と聞いてきました。
収まり? 収まりってなんだ? 1年生のど素人にとって、そもそも サッシの詳細なんてろくに分かってもいなかったので 考えてもいませんでした。
そこで素直に 「すいません、そこまで考えていませんでした。」 と答えたら 「そこまで考えないと話になんないよ」 と切り捨てられてしまいました。
確かに正論、なのですが・・・ 何か違うな、と感じました。 果たして、今の段階で指導されるべきことなのか。
そんなことも繰り返され、 いつの間にか設計することに自信も無くし、 将来の進路に対しても迷いを感じるようになっていました。
そんなとき、 母に少しだけそんな思いを打ち明けたところ 親戚に建築家がいる、ということを教えてもらったのです。
わらにもすがる思いで 電話をかけ、相談をしました。 快く相談に乗ってくれ、何か特別に教えてもらったことは 無いのですが、非常に心強かったことを覚えています。
そして何か行動を 自分の感性を磨くために何かできることを・・・ 必死に考えました。
出した結論は、パリに行くこと。 それも1週間、パリだけに留まること。 そして、カメラを持たず、目にするものをスケッチする。 そうやって、自分の感性を養おう、と思ったのです。
これで帰国後の授業でも成果が出ないのなら 設計での成績的にも、設計の進路には進めない成績でしたので 諦めざるを得ないな、と思っていました。
けれど、悩むより まずは行動を、と考えて 思い切って悔いの残らないようにパリへ向かいました。 一人で行く、初めての海外旅行でした。
本当にスケッチブックと鉛筆を持ち、 建物を見てはスケッチし、 美術館に行っては地元の美大生に混じってデッサンをしていました。 毎日、来る日も来る日も・・・
ルーブル美術館、凱旋門、エッフェル塔・・・ 少しだけ足を伸ばしてベルサイユ宮殿も・・・ どこも刺激的でした。 近代建築も名前なんて知らなくても かっこいい、と思えばスケッチしていました。
本当に夢中だったな、と思います。 そうして旅行から帰り、最初の設計の授業。 これで評価を得られなければ、設計に進むこともできない。 後がありませんでした。
ですが、その授業で 初めて、皆の前で自分の設計について講評をする機会を 与えられたのです。 そう、評価の高い生徒の一人に選ばれたのです。
決して特別な工夫やテクニックを身に付けたとは思いません。 けれど、確実に何かが変わった瞬間でした。
その先からは 設計の成績で高評価を得続けることができ、 設計の進路に進むことも許されました。
そして研究室を選択するときも・・・ 念願の、入学式のとき、挨拶に行った 先生の研究室に入ることが許されたのです。
大学に入って、心に決めた目標の一つが叶った瞬間でした。
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